痴漢は身近に起こりやすい犯罪の1つで、さらには冤罪も多くなっています。
実際に痴漢をしたにせよ、無実にせよ、痴漢で逮捕されてしまったのであれば弁護士に助けを求めることがとても大事になります。
今回は、痴漢で逮捕されてしまった場合に今後どうなっていき、弁護士に依頼することでどのように変わってくるのかをお伝えします。
また、痴漢で逮捕された時の弁護士の選び方や弁護士費用の目安も併せてご説明しますので、ご自身や身近な方が逮捕されてしまった(されそう)…という方は特に参考にしていただければと思います。
痴漢で逮捕された時の弁護士の必要性
後でもご説明しますが、痴漢で逮捕されることにより身柄拘束や刑事罰などの数々の社会的影響があります。
確かに犯罪を犯すことは悪いことですが、それでもしっかり反省して今後の社会復帰を少しでもやりやすくするために弁護士が対応してくれます。
まずは、痴漢で逮捕された時に弁護士に相談・依頼する理由からお伝えしていきたいと思います。
素早い対応と具体的な解決策を取ってくれる
逮捕は突然されて、身内の方とも簡単に連絡が取れなくなります。つまり、逮捕された方は1人で今後どうなるのか不安になっているのですが、弁護士に相談することによって、今後の対策を提示してくれて精神的な支えにもなります。
刑事事件での弁解方法は検察官や裁判官に対して行いますが、一般の人が簡単に対処できるものでもありません。弁護士がいることで今後の対応が分かりますし、具体的解決に動いてくれます。
また、刑事事件に注力している弁護士は、基本的にスピード感を持って活動を行ってくれますので、相談したその日のうちに解決に向けて活動してくれることも期待できます。
早期身柄の開放を訴えてくれる
痴漢で逮捕されて身柄拘束が続くことで社会的影響が大きくなりますが、もし身元もはっきりしていて反省もしているのに理由なく拘束が続くようであれば、準抗告といって裁判官に対して不服申し立てを行って早期解放を訴えかけることもできます。
やはり少しでも早く身柄開放されて社会復帰した方が、今後の影響も少なくなってくると考えられます。
裁判官に対して準抗告を行うには、やはり専門的知識と難しい手続きが必要ですから、弁護士の力は必要です。
被害者との示談ができる
原則的に痴漢の加害者本人と被害者は示談交渉をすることができませんし、被害者の連絡先も警察などが教えてくれることはありません。
被害者感情からしてみても、加害者本人やその身内から示談(お金による解決)の話を持ち掛けられてもいい気分では無いでしょう。逆に被害者感情を逆なですることにもなります。
弁護士にお願いすれば、被害者の方とも連絡が取れますし、これまでの経験で示談交渉も精通していますので、加害者・被疑者の双方のことを考えつつ良い案配(金額)で解決に向けた交渉をしてくれます。
示談が成立すれば、身柄開放や不起訴などになる可能性も高くなってきます。
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今後の更生や会社・家族との交渉を行ってくれる
仮に今回の刑事手続きはすぐに終わったとしても、逮捕されたことにより会社や家族などからの見られ方も変わってくるでしょう。場合によっては解雇や離婚などの事態になり得るということは上でもお伝えしました。
弁護士によっては、会社や家庭の間に入って円滑に社会復帰できるように交渉してくれる弁護士もいます。
特に痴漢などの性犯罪は再犯率も高いので、今後の更生も含めてその後の対応もしっかり行ってくれる弁護士もいるのです。
無実の主張をしてくれる
ここまでは実際に痴漢をした場合についてでしたが、痴漢冤罪という言葉もあるように、実際に痴漢していないのに逮捕されてしまうというケースも少なくありません。
もし無実の罪で逮捕されてしまった場合、被疑者1人だけで無実を訴えることはかなり難しいです。
罪を認めていないということで身柄拘束が長引くことも考えられますが、弁護士を付けてしっかり真実を追及していくことが大事です。
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痴漢で逮捕された時の弁護士を探すポイント
痴漢で逮捕された時の弁護士の重要性は分かっていただけたかと思いますが、では相談・依頼する弁護士はどのようにして見つければいいのか?という疑問があると思います。
こちらでは痴漢で逮捕されてしまった時の弁護士選びのポイントについてお伝えしていきます。
無料相談を受けてくれる弁護士事務所も多くありますので、まずは相談から弁護士と接点を持ってみてください。
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刑事事件や性犯罪に力を入れている弁護士か?
まず、弁護士といっても様々な分野で活躍の場があり、それぞれに得意・不得意があります。痴漢事件は刑事事件ですが、それ以外にも離婚問題や賠償問題で活躍する弁護士など様々です。
まずは、刑事事件での弁護を得意・経験豊富な弁護士を探すようにしましょう。さらに言えば、性犯罪に精通している弁護士がなお良いです。
近くの弁護士事務所の弁護士や知り合いが以前依頼したことがある弁護士が、必ずしも刑事事件を得意とする弁護士とは限りませんので、こうやってインターネットで刑事事件が得意な弁護士を絞り込む方が理にかなっていると言えます。
土日も対応している弁護士か?
もう1つ。土日対応している弁護士を優先的に探してみましょう。刑事手続きは、土日関係なく決まった期間で行われますので、1分1秒が大事になってきます。さらに言えば、24時間対応をしている弁護士がベストです。
夜中に痴漢で逮捕されることも少ないでしょうが、例えば帰宅時に痴漢で逮捕されて、そのまま1人で警察署で夜を過ごすのと、弁護士に相談して対応が分かった上で夜を過ごすのとでは被疑者の気分もかなり違うでしょう。
早い対応が早期解決に繋がります。
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痴漢で逮捕された時の弁護士費用相場
実際に弁護士に依頼するとなると、弁護士費用がかかってきます。そして、結論から言えば刑事事件での弁護士費用はけっして安くはありません。
痴漢で逮捕された場合は、相場としてだいたい60~100万円前後の弁護士費用がかかるものだと思っておきましょう。
具体的には、弁護士事務所の料金体系や逮捕されている状況によって変わりますが、簡単にまとめると以下のような料金が発生します。
内容 | 費用相場 |
相談料 | 1時間5,000~10,000円 (相談料金無料の弁護士もあり) |
接見費用 | 1回1~5万円 |
着手金 | 30万円前後 |
成功報酬 | 30万円前後 |
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それぞれ、どのような内容でいくらくらいかかるのかを以下で詳しくご説明します。
相談料金
相談料金とは、電話や面会などによって弁護士に相談する時の料金です。時間ごとに料金を設定している事務所が多く、基本的に1時間5,000~10,000円程度です。
なお、ここでの面会とは、まだ逮捕されていない人や身内の方が弁護士のもとに相談しに行ったことによる面会です。
昔からの風習で相談料がかかる事務所が大半ですが、最近では初回相談無料など窓口を広げている弁護士事務所も増えてきていますので、相談前に一度確認しておきましょう。
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接見費用
接見とは、逮捕されて身柄拘束されている人のもとに弁護士が面会に行くことで、相場としては接見1回につき1~5万円程度となっています。
こちらも弁護士事務所の料金体系によってまちまちで、着手金に接見費用が含まれている場合もあります。要確認ですね。
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着手金
着手金とは弁護士に依頼する時に支払う費用のことで、仮に弁護士の働きで望む結果にならなかったとしても支払う必要がある料金です。相場は30万円前後となっています。
着手金に関しても弁護士事務所で違っており、着手金として料金がまとめられている場合もあれば、別途料金がかかる場合、着手金は少ないけどその分成功報酬の金額が大きいなど色々あります。
金額も大きくなりますので、依頼前に必ずどのようなケースで合計いくらくらいかかるからしっかり確認しておくようにしましょう。
成功報酬
成功報酬とは、依頼者の望む結果になった時に追加で支払う費用です。例えば、『身柄開放して欲しい』『被害者と示談成功させて欲しい』『不起訴にして欲しい』といった依頼の成果に対して費用が発生します。
こちらも金額はピンキリで30万円前後が相場だと思っておきましょう。
その他発生する費用
以上が痴漢で逮捕された場合の弁護士費用の主な内訳ですが、それ以外にも料金がかかる場合があります。後から追加で料金を請求されて困らないように相談の時点でしっかり確認しておきましょう。
実費
弁護士が裁判所や刑事施設に向かった時の交通費や通信費、書類作成費用など、弁護活動で実際に発生した料金がかかる場合があります。着手金に含まれている場合とそうでない場合がありますので、しっかり確認しておきましょう。
弁護士の日当
実際に弁護士が活動した時間(日数)分の料金が別途発生することがあります。発生する場合1日数万円しますので、こちらもしっかり確認が必要です。
示談する場合の示談金
弁護士費用ではありませんが、被害者と示談交渉する場合に別途示談金が必要になります。痴漢事件での示談金の相場はだいたい30万円前後となっています。
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痴漢で逮捕された後の流れ|少しでも早い対応が大事
弁護士の重要性についてはある程度分かっていただけたかと思いますが、痴漢で逮捕されてしまった場合、今後どのような流れで刑事手続きが進められていくのでしょうか?
上の図のように、痴漢事件に限らず逮捕後は決まった順番と期限で刑事手続きが進められていきます。
対応が遅れてしまうと、後から挽回することが難しい事態にもなりかねませんので、早い段階で弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
また、逮捕後であれば無料で利用できる弁護士制度もありますので、ぜひ有効活用してください。
逮捕と警察からの取調べ
逮捕されれば当然、身柄を拘束されることになります。
逮捕後1~2日は警察署で取調べを受けることになりますが、痴漢で逮捕された場合は逮捕されたその日のうちに帰されるということも少ないでしょう。
痴漢は主に通勤・帰宅時に起こる犯罪ですが、「あれ?○○さんまだ会社に来ていないぞ」と、突然の逮捕だけでも通常の生活に影響が出てくることは安易に想像できますね。
検察の取調べと勾留
逮捕後48時間以内に検察に身柄を移され、検察官から取調べを受けることになります。この間も身柄は拘束されたままです。
被疑者が罪を認め、住所や勤務場所などの身元がはっきりしている場合は、勾留されずに身柄を開放されることもあります。
しかし、過去に逮捕歴がある場合や、痴漢行為の内容が悪質、冤罪などで容疑を認めていない場合は、勾留によって引き続き身柄拘束と取調べが行われます。
勾留期間と勾留延長
勾留期間は原則的に検察に移されてから最長10日間となっています。
しかし、被疑者が罪を認めていないなど、捜査が難航しているケースだと勾留延長によって追加で10日間の拘束期間を延期されることがあります。
10~20日も社会と隔離されてしまうと、及ぼす影響も大きいことがお分かりでしょう。痴漢で逮捕されたのであれば、一刻も早く身柄開放の動きをしていく必要があるのです。
起訴・不起訴の判断
勾留の後は、被疑者は起訴か不起訴かの判断が下されます。簡単に言うと、被疑者の罪が問われるか否かの判断です。起訴されるとほとんどの確率で何かしらの罰則を受けることになり、前科も付いてしまうこととなります。
たとえ実際に痴漢を行っていたとしても、被害者と示談が済んでいるなど被疑者もしっかり反省しているようであれば不起訴になってそれ以降は罪に問われないこともあります。
ですので、この起訴・不起訴の判断がされるまでの早い段階で弁護士の力を借りながら逮捕後の対応をしていくことが大事になってきます。
身柄を確保されない略式起訴もあり
身柄拘束が続くと社会的影響が出てくるということは上でもお伝えしましたが、身柄が解放されても書面で起訴を受けて、その後罰金などの罰則を受ける場合があります。
確かに身柄拘束による社会的影響は少ないですが、起訴されたことによる犯罪歴や罰則などの影響もあります。
どの方法で解決させていくことが最適かは状況によっても違ってきますので、弁護士としっかり話し合って決めていくことが一番良いと言えるでしょう。
起訴後の刑事裁判
起訴されてしまうと、刑事裁判によって何の罪で有罪か無罪か?具体的な罰則はどのくらいか?といったことが決められます。
そして、覚えておかなければならないことが、起訴されてしまうと99.9%の確率で有罪になってしまうということです。
よくドラマなどで裁判所で有罪か無罪かを言い争うシーンがありますが、あれは稀なケースで、ほとんどの場合は有罪が決まっているようなものです。
ですので、逮捕された時の対処法としては、起訴される前のいかに早い段階から動いていくかが大事になるのです。
起訴後勾留と保釈
身柄拘束されたまま起訴されると、基本的にその後も身柄拘束され続けることになります。
起訴から刑事裁判までは、裁判所の込み具合によりますが、2ヶ月程度かかってしまうでしょう…。逮捕されてから2ヶ月以上も身柄拘束されていると、社会復帰も安易にはできないことも想像できるかと思います。
起訴後であれば、保釈制度を利用することができます。保釈制度とは、保釈金を一時的に裁判所に預けることでいったん身柄解放してもらう方法です。
保釈金は収入などに応じて変動してなかなかの高額にはなりますが、裁判に出頭することで返還されます。
痴漢で逮捕された時の罰則と社会的影響
ここまで痴漢で逮捕された場合の刑事手続きの流れについて簡単にお伝えしました。
では、痴漢の罪に問われてしまった場合、具体的にどのような罪名でどれくらいの罰則を受けることになるのでしょうか?
上でもお伝えした、身柄拘束による社会的影響なども併せて、逮捕されたことで考えられる悪影響についてまとめていきたいと思います。
逮捕による影響を十分に理解していただき、そのような影響を少しでも減らすために早め早めに弁護士に相談して対策を取っていきましょう。
痴漢に該当する罪名と罰則
痴漢による罰則は、痴漢の程度などによって2種類いずれかの罪に問われることになります。それぞれどのような場合にどれくらいの罰を受けるのかを見ていきましょう。
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迷惑防止条例違反
痴漢行為が軽微な場合、迷惑防止条例違反として逮捕される可能性が高いです。例えば、被害者の体を服の上から触ったようなケースです。
迷惑防止条例違反の罰則は各都道府県によって違いますが、東京都の場合6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。さらに、常習性があった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に罰則も重くなります。
迷惑防止条例違反には罰金刑もあるため、仮に逮捕されても比較的早期に身柄開放される可能性もあります。
強制わいせつ罪
被害者の下着の中にまで手を入れる、長時間に渡って触っているなど、痴漢行為が悪質であれば強制わいせつ罪に問われることもあります。
強制わいせつ罪の罰則は、6ヶ月以上10年以下の懲役と、懲役刑しか用意されていません。痴漢をして強制わいせつ罪で逮捕されてしまった場合には、上記の起訴までの期間身柄を拘束され続ける可能性が高いと言えるでしょう。
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罰則以外の社会的な悪影響
痴漢による刑事罰は先ほどご説明した通りですが、逮捕されたということだけでも様々な社会的悪影響が出てくることが考えられます。
刑罰以外の痴漢で逮捕されたことによる悪影響をまとめたいと思います。
身柄拘束による影響
上記でも触れた勾留延長まで含めると、逮捕されてから起訴まで最長23日間身柄を拘束されることになります。
そもそも、突然逮捕されて周囲と連絡が取れなくなることだけでも何かしらの影響が出てくるのに、さらに身柄拘束が1ヵ月近くされてしまえば、どれほどの社会生活に影響が出てくるかは安易に想像ができることでしょう。
家族や会社に対する影響
逮捕によって数日~数週間会社や家庭に戻れないだけでも影響がありますが、逮捕された事実が周囲に知られることによる悪影響も十分に考えられます。
会社であれば、最悪のケースでは解雇されることもあり得ますし、解雇されなくても『悪事千里を走る』で、社内で逮捕の噂がされて居心地が悪くなることも考えられます。
家庭であれば、性犯罪という性質上離婚のきっかけにもなり得ますし、離婚に至らずともこちらも家庭内で険悪な雰囲気になることはありそうです。
前科・前歴による影響
逮捕されることで前歴が、起訴までされると前科が付くことになります。
正直申し上げますと、前科・前歴が付いたことで社会的に大きな影響があるわけではありません。普通に生活していれば、前科・前歴がバレることもほぼないですし、弁護士や教員、警備員、国家資格を要する職業以外は特に影響なく再就職も可能です。
どちらかと言うと、逮捕前の社会生活への影響が大きいので、いかに早く身柄拘束を解いてもらって、今後しっかり更生していくかを真摯に伝えていくことが大事になります。
実名報道の影響
ただ、ニュースによって実名報道がされてしまうと、多くの人に知られるきっかけにもなりますし、インターネット上に「○○が痴漢で逮捕された」という情報が残ってしまうことも考えられます。
実名報道されるかどうかはマスコミ次第の部分が大きく対象は難しいですので、できることと言えば、実際に痴漢をしたのであればしっかり反省して少しでも早く社会復帰をしてしっかり更生していくことでしょう。
まとめ
身近にも起こり得る犯罪、痴漢。
いくら身近とは言え、痴漢で逮捕されてしまえば、実刑判決を受ける可能性だってありますし、長期的に身柄拘束されてしまうとそれだけで様々な社会的影響があります。
もしも痴漢で逮捕された(されそう)のであれば、早急に弁護士に相談して早め早めの対応をしていくことをおすすめします。
弁護士は刑事事件対応の経験や知識が豊富ですし、示談交渉などの交渉事にも活躍してくれます。
相談だけでも専門的なアドバイスをもらえてかなり心強いと思いますし、依頼すればさらに協力してくれます。