身近な方が痴漢で逮捕されてしまったら今後どのような流れで手続きが進められていき、いつまで身柄を拘束されてしまうのかが気になるところですね。
事件の内容や被疑者の状態によって多少の違いこそはありますが、逮捕後の刑事手続きには決まった流れがあります。
今回は、痴漢で逮捕された後の刑事手続きの流れや流れの中でできる対処法についてお伝えしていきたいと思います。
大事なことを先に言っておくと、刑事事件では少しでも早い対応が重要になってきます。もしすでに痴漢で刑事事件に関わっているような状況であれば少しでも早い行動を起こすようにしましょう。
この記事で分かること |
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痴漢で逮捕された後の刑事手続きの流れ
それでは早速、痴漢で逮捕された後の刑事手続きの流れについてご説明します。
まず簡単に全体的な流れを図に表すと上のようになります。
途中で身柄開放されるなど事件によって多少の違いがありますが、基本的にこのような流れと期限で刑事手続きが行われていくのです。
それでは以下でそれぞれの項目についてもう少し詳しく補足をしていきたいと思います。
逮捕・警察での取り調べ
まず、逮捕され身柄を拘束されると、警察からの取調べを受けることになります。刑事ドラマのように、警察から事件の理由や詳細などの質問がされていくのですが、すでにここでの対応から重要になってきます。
例えば、実際には痴漢したのにごまかそうとしていい加減な供述をしていた場合、反省していないと受け取られて、刑罰や身柄拘束の長さにも影響します。
逮捕された時点からの対応が大事になってくるのです。逮捕後すぐに当番弁護士制度によって1度だけ無料で弁護士を呼ぶことができます。無料の面会(接見といいます)でも、今後の手続きの流れやそれに対するアドバイスなど十分な力になってくれるでしょうから、使える制度はきちんと使いましょう。
警察での身柄拘束は48時間以内
警察に被疑者の身柄を置いておける期間は48時間までと決まりがあります。
警察から軽微な犯罪だと判断されれば、微罪処分として身柄開放されることもありますが、痴漢事件で微罪処分になる可能性はかなり低いと言えます。
送検・取調べ
逮捕から48時間以内に警察から検察へと身柄が移されます。このことを送検(送致)と言います。
検察からも取調べを受けることになりますが、検察での取調べは24時間以内となっています。
ただ、被疑者に逃亡の恐れがあったり、容疑を否認していてさらに捜査が必要だという場合は、以下の勾留によってさらに身柄拘束と取調べが続けられることもあります。
逮捕後合計72時間は家族も面会できない
逮捕されて警察(48時間)→検察(24時間)と取調べを受けることになりますが、これら決められた期間の逮捕から合計72時間以内は、原則的に家族の方でも被疑者と面会することができません。
たとえ身内であっても、逮捕後すぐの捜査が進んでいない時点で第三者に面会されると、証拠隠滅などの可能性もあり得るからです。
もし家族の方が逮捕されたのであれば、逮捕後すぐにお互い状況を確認したいはずですよね。
弁護士であれば、この期間にも被疑者と面会することができます。上でご紹介した、当番弁護士や自分でネットなどから弁護士を探してみて面会に行ってもらうことで、被疑者にとっても大きな安心に繋がるでしょう。
【関連記事】
「接見・逮捕時の面会を弁護士に依頼する7つのメリット【費用や無料制度も解説】」
勾留
上記の24時間以内では捜査不十分だったり、被疑者が逃亡する恐れがある場合、検察官は裁判官に対して勾留請求を行います。簡単に言うと、勾留によって身柄拘束続ける許可を裁判官にもらうためのものです。
検察官から提出された資料をもとに、裁判官はこの被疑者が勾留するに値すると判断されれば被疑者は勾留されます。
勾留の期間は最大10日間とかなり長くなります。当然この間も被疑者の身柄は拘束されたままです。
勾留されない場合
もし勾留が必要ないと判断されれば、在宅事件となり身柄開放された上で捜査が進められるか、早い段階で起訴・不起訴の判断がされます。
痴漢事件でも、被疑者の身元がしっかりしてきちんと反省していたり、被害者と示談が済んでいるなどの事情があれば早い段階で身柄が開放されることもあります。
身柄拘束が長引けば社会的な影響も大きくなってくるでしょうから、逮捕後すぐの対応が大事になってくるのです。
さらに捜査が必要な場合の勾留延長
反対にさらに捜査が必要だと判断されれば、勾留延長によってさらに身柄拘束が続く場合があります。
勾留延長が認められた場合の期間は最大10日間。先ほどの勾留期間と合わせて最大20日間勾留される可能性もあるのです。
起訴・不起訴※ポイント!
刑事事件において、この起訴・不起訴の判断が一番重要なポイントです。ここで実質有罪・無罪が決まると言っても過言ではありません。
起訴とは、検察官が裁判所に刑事裁判を行ってもらうことを提起することで、刑事裁判になれば有罪率は99.9%、何かしらの罰則を受けることになるでしょう。
反対に不起訴とは起訴されないことですが、実際に痴漢をしていても不起訴になる可能性はあります。
被害者と示談が済んでいてたり、被疑者本人がしっかり反省して軽微な痴漢で再犯もしないだろうと判断されれば、不起訴処分を受けることもあります。
身柄拘束されていない略式起訴
一方で、身柄拘束はされずに起訴されることもあります。略式起訴と言い、身柄開放された後に同意手続きの通知が届き、同意すれば書面にて罰則が言い渡される(ほとんど罰金刑)ものです。
早い段階で身柄が開放されますので、社会復帰も比較的スムーズにできますが、起訴されたことにより前科が付くことになります。
そのことが会社に発覚すれば、会社内で何かしらの処遇を取られるかもしれません。不起訴を目指すのか、略式起訴で早い身柄開放を目指すのかは状況によりけりですので、弁護士としっかり話し合って決めることをおすすめします。
起訴までの最大23日間がとても大事
このように逮捕された後は上の図の黄色い矢印にあるように起訴・不起訴までの最大23日間が大事になってきます。
最大23日間とは言っていますが、さらに言えば逮捕されてすぐの対応が重要なのです。逮捕後すぐに何も分からない状態の被疑者が、捜査機関に対して反抗的な態度を取ってしまえば、そのことがマイナスにもなってしまいます。
すぐに弁護士を呼んで適切なアドバイスを貰うようにしましょう。お伝えのように、1度だけなら無料で弁護士を呼ぶこともできますし、不起訴獲得や被害者との示談など、具体的な解決方法を取っていきたいのなら、弁護士に依頼して刑事弁護をしてもらうことが一番です。
刑事裁判
起訴をされるとその後刑事裁判で有罪・無罪や刑罰が決定されます。お伝えの通り、刑事裁判にまで進むと有罪率が99.9%となるため、この段階でできることは限られてしまいます。繰り返しますが、起訴前の早い弁護活動が大切です。
起訴後の勾留
起訴後、裁判まで被告人の身柄拘束が必要だと判断されれば、起訴後も勾留されることになります。
痴漢の中でも、強制わいせつ罪に該当するような悪質なものや被告人が全く反省していない、逃亡のおそれがあるような場合に起訴後勾留の可能性は高くなります。
起訴から刑事裁判までおよそ1ヶ月ほどあり、その間身柄拘束され続けるとなると社会復帰に大きな悪影響を及ぼすことは想像も付くでしょう。
起訴後勾留では、保釈金を裁判所に預けて一時的に身柄開放してもらう保釈制度もあります。
痴漢で逮捕された時に問われる罪と罰則
以上が痴漢で逮捕された後の主な刑事手続きの流れです。
もう1つ気になることが、痴漢で逮捕された後は何罪に問われてどのような罰則が待ち受けているのか?ということですね。
痴漢には痴漢罪という罪名はなく、事件の内容によって以下の2種類の罪いずれかに問われることになります。
迷惑防止条例違反|軽微な痴漢
被害者の体をちょっと触ったなどの軽微な痴漢では、各都道府県の迷惑防止条例違反に該当することが多いです。
具体的な罰則は都道府県によって違いますが、東京都の場合、6ヶ月以下の懲役または50万円の罰金となります。さらに、常習性がある場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金にまで罰則が大きくなります。
迷惑防止条例違反での逮捕では罰金刑もあるため、ご説明した略式起訴などによる早期の身柄開放もあり得ます。
強制わいせつ罪|悪質な痴漢
被害者の下着の中にまで手を入れて長時間体を触るなど、痴漢の内容が悪質であれば強制わいせつ罪に問われてくることがあります。
強制わいせつ罪の罰則は、6ヶ月以上10年以下の懲役と懲役刑しか設けられていません。
強制わいせつ罪で逮捕された場合は、身柄拘束も長くなり、簡単に釈放はしてもらえないでしょう。
起訴されて刑事裁判まで進めば、2ヶ月近く身柄拘束され続ける事態にもなりかねません。
痴漢で逮捕された時にできる対処法
お伝えの通り、痴漢で逮捕された後はある程度決められた流れで刑事手続きが進められていきます。
こちらでは、その流れの中でできる対処法についてお伝えしたいと思います。
きちんとした反省|逮捕後すぐ
まず、痴漢で逮捕された本人ができることは痴漢の事実を認めきちんと反省することです。これが一番で、唯一被疑者にできることです。
一方で、痴漢冤罪で逮捕されてしまったという場合は、しっかり無実の主張をしてください。
実際にやったのにごまかそうとしていい加減な供述をしたり、途中から態度を変えていると、後の起訴・不起訴や刑罰にも影響してきます。
逮捕された本人はこの記事を見ることができないでしょうから、以下のようにまずは弁護士を呼んで具体的なアドバイスをもらうことが一番です。
弁護士との接見|逮捕後すぐ
逮捕されたらすぐに弁護士を呼びましょう。
お伝えのように、当番弁護士制度で1度無料で弁護士が呼べます。呼ばない理由がありません。
以下のような具体的対処法を取っていきたい場合は、依頼することを前提にご自身で弁護士を選んで接見してもらっても良いでしょう。無料相談ができる弁護士事務所もありますし、当番弁護士のように1度なら無料で接見してくれる弁護士もいます。
事件の程度によって、どのような方法が最適かは変わってきますので、直接話して対処法を考えていくようにしましょう。
被害者との示談|逮捕後すぐ
刑事事件では起訴・不起訴の分岐点が重要だとお伝えしましたが、痴漢事件で不起訴獲得するためには、被害者との示談が大きな対処法の1つです。
起訴される前に先に被害者に謝罪して和解しておくことで、検察官もこれ以上罰則を与える必要はないと判断して不起訴獲得できることもあります。
ただ、被害者本人やその家族が直接示談をしても簡単に和解できないケースが多いので、弁護士が代理で行うことが普通です。
痴漢の示談については以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】
「痴漢の示談金は30万円が相場|示談金額が決まるポイントと支払い方法も解説」
「痴漢の示談を弁護士に依頼する必要性・メリットと痴漢事件が得意な弁護士の選び方」
早期釈放・勾留に対する準抗告|勾留後
もし、身元もしっかりしていて逃亡のおそれも無いのに勾留によって身柄拘束が続いている場合は、勾留に対する準抗告によって早期釈放を目指すこともできます。
準抗告とは、裁判官の勾留という判断に異議を申し立てることで、これも弁護士でなければできないことです。
例えば、会社勤めの方であれば身柄拘束で数日間会社を欠勤するだけでも様々な影響が考えられますので、早期釈放は重要な対処法の1つです。
保釈請求|起訴後
起訴された後であれば、保釈請求を行うことができます。
起訴後勾留は1ヶ月程度あるとお伝えしましたが、その間刑事施設に拘束され続けることは被告人本人の精神負担にもあるでしょうし、社会的影響もかなり大きいでしょう。
執行猶予付き判決の弁護|起訴後
痴漢の強制わいせつ罪で罪に問われた場合、懲役刑しか設けられていませんが、判決を受けたらただちに刑務所に入れられるというわけでもありません。
執行猶予付き判決を獲得できれば、有罪ではありますが、いったん社会復帰をすることはできます。
前科の有無や被告人の態度、事件の内容などから弁護士が執行猶予付き判決獲得を目指した弁護活動をすることもできます。
痴漢で逮捕された時に弁護士に依頼するメリットと費用相場
このように逮捕後の対処には弁護士の力は必要不可欠と言っても過言ではありません。
最後に、痴漢で逮捕された時に弁護士に依頼するメリットと依頼した場合の費用相場についてまとめたいと思います。
弁護士に依頼するメリット
まずは弁護士に依頼するメリットです。こちらでは簡単にご紹介しますので、より詳しくを知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
【関連記事】
「痴漢で逮捕された時の弁護士の重要性と弁護士選びのポイント」
具体的なアドバイスが貰える
逮捕後の主な流れや対処法はこの記事でお伝えしてきましたが、実際にどのようになってどういう対処法を取れば良いのかは事件内容によって若干変わってきます。
そのことを適切に判断してくれる人は弁護士になりますので、直接会ってアドバイスを貰うことが一番です。
何度かお伝えしていますが、当番弁護士なら無料で接見ができますし、無料相談ができる弁護士事務所もあります。
まずは費用をかけなくてもけっこうですので、直後弁護士から話を聞いてみることでより明確な今後の流れが分かってくるでしょう。
具体的な弁護活動ができる
被害者との示談や裁判官への準抗告など、弁護士でなければ難しい活動も数多くあります。
弁護士に具体的な活動を依頼することで当然以下のように費用もかかってきます。費用を躊躇してそのまま何も対策を取らないのか、多少費用はかかっても最善を目指すのかをしっかり検討してみてください。
依頼をすれば当然弁護士も最善を尽くして活動を行ってくれます。
弁護士費用の相場
刑事事件での弁護士費用は事件の内容や弁護士事務所によって多少前後しますが、60万円~100万円程度が相場となっています。
内容 | 費用相場 |
相談料金 | 1時間5,000円~10,000円 (初回相談料金無料の弁護士事務所もあり) |
接見費用 | 1回1万円~3万円 |
着手金 | 30万円前後 |
成功報酬 | 30万円前後 |
確かに決して安くはない金額ですので、慎重に検討しつつも、刑事事件では早い対策が重要になりますので、先延ばしにすることなく判断していただければと思います。
無料相談などまずは費用をかけずにできることもありますので、当番弁護士制度の利用や無料相談など何かしらの行動を起こすことをおすすめします。
【関連記事】
「痴漢事件の弁護士費用相場と賢く弁護士費用を抑えるコツ」
まとめ
痴漢で逮捕された後はある程度決まった流れで刑事手続きが行われていきます。
事件の内容や被疑者の状態などによって若干違いはありますが、共通して言えることは少しでも早くに対処していくということです。
被害者との示談や裁判官・検察官への異議申立てなど、弁護士にしか難しいことも多いのが刑事事件。弁護士に依頼することが最善なのですが、費用もそれなりにかかってしまいますので、まずは無料相談や無料接見などから弁護士と接点を取ってみても良いでしょう。