青少年健全育成条例(せいしょうねんけんぜんいくせいじょうれい)とは、青少年が健全に成長できるように、悪影響を及ぼす行為を制限・禁止した条例で、各自治体(都道府県)でそれぞれ規定されています。
特に児童に対する淫行は厳しく取り締まられており、児童買春のように金銭のやり取りがなくても青少年健全育成条例違反として逮捕・罰則を受ける可能性があります。
今回は、青少年健全育成条例がどのようなもので、違反した場合にはどのような罰則を受ける可能性が出てくるのかをご説明します。
青少年健全育成条例とは|制限の内容や罰則
冒頭でもお伝えしたように、青少年健全育成条例とは、青少年が健全に成長できるように、悪い影響となる行為を制限・禁止した条例です。
各自治体によって多少の違いがありますので、厳密にはお住まいの地域の青少年健全育成条例もご覧いただきたいのですが、基本的な内容はどこも同じで主に以下の内容が決められています。
情報が少し古いですが、各都道府県の青少年健全育成条例をまとめたものについては、以下のリンク先をご覧ください。
参考:「都道府県青少年保護育成条例(平成20年12月1日現在)|内閣府」
青少年健全育成条例で禁止・制限されている行為
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青少年健全育成条例で禁止・制限されている内容は主に上記の行為が挙げられます。特に青少年健全育成条例違反として刑事事件に問われやすい行為が、一番上の青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為(淫行)です。
児童に対する性犯罪と言えば、『児童買春』が代表的なものですが、仮に同意があって金銭のやり取りがなくても、青少年健全育成条例で逮捕される可能性があるのです。
青少年健全育成条例違反の罰則
2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
青少年健全育成条例で禁止されている内容に違反した場合、上記の罰則を受ける可能性が出てきます。
淫行で青少年健全育成条例違反になり得るケース
青少年健全育成条例違反で刑事事件に発展する場合には、淫行によるものが多いとお伝えしましたが、淫行で青少年健全育成条例違反になるケースについてまとめました。
18歳未満と認識している
そもそも青少年とは、18歳未満の児童を指します。“青少年”とありますが、少女も少年も対象となり、18歳未満と知りながら淫行をすることで青少年健全育成条例違反になり得ます。
一方で、児童が18歳以上だと嘘を付き、18歳未満だと気付いていない状況での淫行では、違反にはなりません。ただし、青少年健全育成条例違反の疑いをかけられることは考えられますので、18歳未満だと知らなかったことを検察官や裁判官に分かってもらう必要があります。
みだらな性行為やわいせつ行為(淫行)である
淫行とは、青少年を誘惑、威迫、欺罔して自分の性的欲求を満たすだけの性行為やわいせつ行為を行うことです。繰り返しますが、仮に金銭のやり取りがなく、同意がある状態での性行為等でも淫行になり得ます。
反対に、真剣交際をしていて性行為等があったとすれば、淫行にはならず青少年健全育成条例違反にもなりません。ただし、こちらも真剣交際と淫行と判断が付きにくいケースがあります。
もし金銭のやり取りがあったり、暴行や脅迫などを用いた同意がない状況での性行為、立場を利用した性行為などは、後述する罪に問われる可能性も考えられ、青少年健全育成条例違反よりも重い罰則が待ち受けています。
青少年健全育成条例に関連する罪と罰則
上記でもお伝えしましたが、同意がない場合や金品授与がある場合、立場を利用した場合などでの青少年との淫行には、他の罪が問われる可能性もあります。
これらの罪は青少年健全育成条例違反よりも重い罰則が設けられており、該当すればそちらの罪で捜査が進められていくことになります。
こちらでは、青少年健全育成条例に関連した児童に対する淫行の罪についてご紹介します。
児童買春罪|金品授与がある性行為等
5年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
児童に対して金品を渡して性行為等を行うと児童買春になり得ます。児童買春に対しては、上記の罰則が設けられており、青少年健全育成条例と比べてより重い罰則となります。
児童淫行罪|立場を利用した性行為等
10年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
児童福祉法でも青少年に対する淫行に対して厳しい罰則が設けられています。親や教師、児童の勤務先の上司など、強い立場を利用して青少年と淫行を行った場合、児童福祉法での児童淫行罪になることもあり得ます。
児童淫行罪も非常に重い罰則が設けられている犯罪です。
強制わいせつ罪・強制性交等罪|同意のない性行為等もしくは13歳未満に対する性行為等
強制わいせつ | 6ヶ月以上10年以下の懲役 |
強制性交 | 5年以上の有期懲役 |
相手が青少年に限った話ではありませんが、相手の同意なく暴行や脅迫を用いて性行為等に及んだ場合、強制わいせつ罪や強制性交等罪に該当してきます。罰則は懲役刑しかない非常に重い罪です。
また、相手が13歳未満だった場合、たとえ同意があったとしても強制わいせつ罪/強制性交等罪に該当してきます。
青少年健全育成条例に違反した場合にすべきこと
このように、青少年に対する淫行は、青少年健全育成条例をはじめとした様々な法令で禁止されています。場合によっては逮捕され刑事罰を受けることも十分に考えられるでしょう。
こちらでは、青少年健全育成条例に違反した場合にやるべきことをご説明します。
弁護士に相談する
ズバリ申し上げると、青少年健全育成条例違反はれっきとした犯罪行為で、逮捕や刑事罰を受けることも十分にあります。「相手からの同意があった」「18歳未満だと知らなかった」ような状況でも警察から調べを受け、場合によっては逮捕されることもあり得ます。
具体的にどのような対策を取っていけば良いのかは状況にもよります。まずは法律の専門家である弁護士に相談し、今の状況にあった最適なアドバイスを受けてください。
状況に応じて被害者と示談を行ったり、警察や検察官に事情を説明して、必要以上の身柄拘束や罰則を受けることを防ぐことができます。反対に、何もせずに過ごしていることで、突然逮捕される可能性も高くなると言えるでしょう。
被害者と示談を行う
被害者がいる性犯罪では、被害者と示談交渉することで、刑事事件に迅速に対応することができます。示談で和解できれば、不起訴、身柄開放、刑の軽減など、刑事事件で受ける罰則を軽減することが期待できます。
ただし、青少年健全育成条例違反での淫行では、被害者が未成年となります。基本的には被害者の保護者と示談交渉をすることになりますが、多くのケースで示談に応じてくれず上手くいきません。
弁護士に相談した上で、必要であれば弁護士に示談交渉を依頼するようにしましょう。弁護士が間に入ることで、示談交渉に応じてくれる被害者家族の方は多いです。
逮捕や勾留の阻止
すでに刑事事件に発展しようとしている場合、逮捕や勾留によって身柄拘束が行われることが考えられます。逮捕は突然行われますので、会社員の方であれば、突然仕事を休む(無断欠勤)ことになり、社会的な影響も出てくると考えられます。
また、ご家族にも逮捕の事実は知られることとなり、「なぜ逮捕され、何をしたのか」までも知られる可能性が高くなるでしょう。
逮捕される前の早い段階から示談などの手を打っておくことで、社会的な影響を少なく抑えて刑事事件を解決することもできます。
「まだ警察に調べられていないから大丈夫」ではなく、思い当たる節がある場合、少しでも早く弁護士に相談して、然るべき対処を取ることをおすすめします。
まとめ
青少年健全育成条例とは、青少年が健全に成長できるように、悪影響を及ぼす行為を禁止・制限した条例です。各自治体によって若干違いますのが、主に以下の内容が禁止・制限されています。
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特に刑事事件に発展しやすい行為が、青少年とのみだらな性行為等(淫行)です。たとえ青少年からの同意があって、児童買春でなくても青少年健全育成条例によって逮捕される可能性はあります。
少しでも思い当たることがある方は、弁護士に相談して今できることのアドバイスを受けてください。